制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:営業保証金等による損害の補填 | トラブル事例中項目:弁済業務保証金 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例保証協会の入会資格は宅建業協会の会員であること
最高裁判決 平成16年11月26日
(判例時報 1881号 76頁)
(判例タイムズ 1170号 158頁)
《要旨》
宅地建物取引業保証協会(たくちたてものとりひきぎょうほしょうきょうかい)
宅建業者を社員として、国土交通大臣の指定
を受けた社団法人であって、社員の宅地建物
取引業に係る取引に関する苦情の解決及び
取引により生じた債権の弁済等が主な業務内容である。が、宅地建物取引業協会の会員ではないことを理由に入会を拒否したことが不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。には当たらないとされた事例
(1) 事案の概要
Xは、宅地建物取引業者(以下「宅建業者」という。)であり、Yは、宅地建物取引業法(以下「法」という。)に基づき指定された宅地建物取引業保証協会(たくちたてものとりひきぎょうほしょうきょうかい)
宅建業者を社員として、国土交通大臣の指定
を受けた社団法人であって、社員の宅地建物
取引業に係る取引に関する苦情の解決及び
取引により生じた債権の弁済等が主な業務内容である。(以下「保証協会」という。)である。Yへの入会資格要件に関しては、Yの定款施行規則(以下「本件規則」という。)3条1項によって「本会の会員は、全宅連会員の所属構成員でなければならない。」と規定(以下「本件入会資格要件」という。)しており、Xが、Yに対して入会の申込みを行った際、Yは、Xが都道府県宅建業協会の会員でないことから本件入会資格要件を満たさないことを理由に上記入会の申込みを拒否する旨の決定をした。そして、Xは、YがXの入会申込みを拒否したことは不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。を構成すると主張して、XがYの会員たる資格を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Yに対し損害賠償の請求を行った。
一審は、Xの地位確認請求及び損害賠償請求を共に退けたが、原審が、Xの損害賠償請求について慰謝料50万円の支払いを認容したため、Yが上告した。
(2) 判決の要旨
(ア)保証協会としては、弁済業務(べんさいぎょうむ)
宅地建物取引業保証協会が、その社員である宅建業者と
宅地建物取引業に関して取引をした者がその取引によって
生じた債権を弁済する業務をいう。
(べんさいぎょうむ)
宅地建物取引業保証協会が、その社員である
宅建業者と宅建業に関して取引をした者がそ
の取引によって生じた債権を弁済する業務をいう。に係る制度を適切に運営し、これを維持するために、その入会資格につき、入会者の関係法令遵守等の観点からの一定の資格要件を定めることには十分な合理性があるというべきである。
(イ)Yは、共同で研修を行うなど密接な関係のある都道府県宅建業協会の会員であれば、入会者の関係法令の遵守等が相当程度期待し得るものとして、本件入会資格要件を定めたことが明らかであり、この入会要件は合理的なものである。また、宅建業者は、保証協会に入会しなくても、宅建業法25条所定の営業保証金を供託することにより宅建業を営むことができることも考慮すると、Xが本会入会資格要件を満たさないことを理由に入会申込みを拒否した行為をもって、慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。と評価することはできないというべきである。
(ウ)したがって、原審のY敗訴部分は破棄を免れない。そして、Xの損害賠償請求をすべて棄却した第一審判決は正当であるから、同部分に関するXの控訴を棄却すべきである。
(3) まとめ
公益性の強い社団法人等への入会申込みの拒否については、その判断の合理性の有無が問題となることがあるが、当該団体の目的、事業内容、優遇措置の内容等に照らして検討することが必要となってくる。本事案については、研修や苦情処理で保証協会と密接な関係がある都道府県宅建業協会の会員であれば法令遵守が期待できるとして、保証協会への入会資格要件の合理性を認めた。社団法人への入会拒否の適否が問題となった判例は、過去に下級審裁判ではあったが、本件は、最高裁判所の判断であり注目される。
本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。 |