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タイトル:裁判事例黙示の地役権設定契約が締結されたと認定

東京地裁判決 平成16年4月26日
(判例タイムズ 1186号 134頁)

《要旨》
 土地の分譲の際、黙示の地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
設定契約が締結されたと認定された事例

(1) 事案の概要
 Yは、昭和48年10月、売買により甲土地及び甲土地上の甲建物を取得した。Yの父親は昭和初期から甲建物を賃借しており、Yは生まれた時(昭和3年)から甲建物に居住している。一方、甲土地の南側に隣接する乙土地は、更地であるが、平成12年8月、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
による売却によりXが取得している。
 甲・乙土地の間には、境界線を跨ぐコンクリートや乙土地の地表及び地中に排水管があり、更に、Yは、甲建物南側出入口から乙土地の西側道路境界線付近の扉(以下「本件扉」という。)に至るまでの部分(以下「本件通路」という。)を日常的に通行していた。
 Xは、Yに対し、乙土地に立ち入ることを禁止することと、コンクリート、排水管、及び本件扉の撤去、並びに経済的損失等1,000万円の支払を求めて提訴した。これに対し、Yは、Yが甲土地を要役地(ようえきち)
地役権が設定されている場合の、
利便性を高めようとする土地のこと。
とし乙土地を承役地(しょうえきち)
地役権が設定されている場合の、
利用される側の土地のこと。
とする地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
を有すること、Yの乙土地の通行及び乙土地に埋設されている下水道設備の利用を妨害してはならないこと、並びに上記地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
の設定登記手続を求めて反訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)甲土地及び乙土地の売買の際、本件通路の利用状況を継続することが前提とされており、同土地を取得した者は、本件通路につき通行及び下水道の設置利用をする地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
を取得する一方、自己の所有する土地につき同様の地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
の負担を受けるものとする旨の黙示の契約が締結されたとみるのが、当事者の合理的意思に沿うと言うべきである。本件通路の範囲からすると、Yは甲土地を要役地(ようえきち)
地役権が設定されている場合の、
利便性を高めようとする土地のこと。
とし、乙土地を承役地(しょうえきち)
地役権が設定されている場合の、
利用される側の土地のこと。
とする通行及び下水道の設置利用のための地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
を有する。
 (イ)乙土地がYによって通行及び下水道設備設置利用のために継続的に利用されていることが客観的に明らかであり、かつ、Xにおいてそのことを認識することが可能であったといえる。したがって、Xは本件地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
について登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないから、YはXに対し、本件地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
について登記なくして対抗することができる。

(3) まとめ
 本判決は、長期間かつ日常的な通路の利用、通路を利用する必要性などの諸事情を考慮して、黙示の地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
設定契約の存在を認め、また、未登記での対抗の可否については、「譲渡の時に、右承役地(しょうえきち)
地役権が設定されている場合の、
利用される側の土地のこと。
要役地(ようえきち)
地役権が設定されている場合の、
利便性を高めようとする土地のこと。
の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造などの物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権(ちえきけん)
他人の土地を自分の土地の利便性を高める
ために利用することができる権利のこと。
設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない」とする最高裁の判断(最判平成10年2月13日)を踏襲している。

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