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タイトル:裁判事例隣接店舗の排気ダクトの騒音

東京地裁判決 平成15年2月17日
(判例時報 1844号 74頁)

《要旨》
 隣接する店舗の排気ダクト及びエアコン室外機から発する騒音・熱風が受忍限度を超えているとして、損害賠償請求の一部が認められた事例

(1) 事案の概要
 Xは、駅から徒歩1分程の距離に位置する商業地域(しょうぎょうちいき)
主として商業その他の業務の利便を増進
するため定める地域(都市計画法(9条)。
に土地及び建物(以下「本件ビル」)を所有して居住している。また、Yは飲食店のチェーン店を経営する会社であり、本件ビルの隣接ビルの1・2階を賃借して居酒屋を営業していたが、平成13年4月、本件ビル側に排気ダクトとエアコン室外機を設置し改装工事を施した上で、同年7月、現在の店舗を開店した。
 Xは、排気ダクト及びエアコン室外機の稼働時の騒音が規制基準を超えているなどとして、Yに対し、その撤去と損害賠償金の支払を求めて提訴した。
 これに対し、Yは、Xの請求は権利の濫用(けんりのらんよう)
一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や
実際の結果に照らしてそれを認めることができ
ないと判断されることをいう。例えば、加害を
目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
であることや、Xの主張する受忍限度は超えていないこと等を主張して反論した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件ダクト及び本件室外機による騒音・熱風の程度、本件ビル周辺の環境、Yがより大きな利益を上げようとして改装、出店したものであること、本件ダクト及び本件室外機の存在は、本件ビルの貸ビルとしての収益にも影響を及ぼすものと推認されることなどを総合勘案すると、本件ダクト及び本件室外機による騒音等は、受忍限度を超えており、Xは、Yに対し、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
を理由に慰謝料を請求することができる。諸事情を考慮すれば、その額は、1日につき3,000円を認めるのが相当である。
 (イ)しかし、今後のYによる改善工事実施の可能性もあり、本件ダクト及び本件室外機の騒音の発生状況、被害の内容等の事実関係の推移を待たなければ、Xの損害賠償請求権の成否、内容を確定し得ないから、将来の給付の訴えにかかる部分は理由がない。
 (ウ)また、Xの被害の程度、本件ダクト及び本件室外機の越境の程度はわずかであると考えられること、本件被害場所の地域性、本件ダクト及び本件室外機が撤去されれば、本件店舗の営業は困難になること、Yが、本件ダクト等の移設等の改善案を示して交渉してきた経緯があることなどを総合すると、Xの本件ダクト及び本件室外機の撤去請求までは認められないというべきである。

(3) まとめ
 本件のような店舗における室外機の撤去請求に関する紛争は、舗営業の存続にもかかわることであり、店舗経営者側からすれば死活問題である反面、近隣居住者にとっては生活妨害となってくる。店舗と住宅の共存する地域のおける、騒音等に関する裁判例の一つとして参考になると思われる。

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