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タイトル:裁判事例市街化調整区域についての虚偽の説明

宮崎地裁判決 平成12年10月11日
(判例集未登載)

《要旨》
 市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
都道府県が、都市計画区域の中で定める区域。
市街化調整区域に指定されるのは、
建築物の密度が低い地域である。市街化調整区域では、
少数の例外を除いて住宅等の建築が禁止されている。
の具体的な制限の内容を説明せず、媒介業者に損害賠償の支払が命じられた事例

(1) 事案の概要
 買主Xは、平成7年10月、媒介業者Yの媒介で、売主との間で土地付建物の売買契約を締結し、売買代金1,400万円を支払った。
 本件土地は市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
都道府県が、都市計画区域の中で定める区域。
市街化調整区域に指定されるのは、
建築物の密度が低い地域である。市街化調整区域では、
少数の例外を除いて住宅等の建築が禁止されている。
に所在し、開発行為(かいはつこうい)
主として建築物の建築または特定工作物の建設の
用に供する目的で行なう、土地の区画形質の変更をいう。
、建物の建築、改築等について都市計画法による制約があったが、XはYの従業員yからは、重要事項説明等の際に具体的な制限の内容について説明がなく、住宅の建替えは可能であるとの説明を受けていた。
 その後、Xは建物を建て替えることとし、建築業者に見積りを依頼したところ、建物の建替えができないことを知らされた。
 Xは、yによる説明を誤信して当該物件を購入したものであり、その土地建物の時価相当額は611万円であるとして、Y及びyに対して、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
に基づく損害賠償請求の訴えを起こした。

(2) 判決の要旨
 (ア)Y及びyは、一定期間の居住の継続等の条件が満たされれば、建物の建替えが認められる可能性がある旨主張しているが、本件において、当該可能性があることを認めるに足る証拠はない。
 (イ)Xは、不動産を購入したのは今回が初めてであり、また、本人の職歴、経験等に照らして、不動産取引について専門的知識を有していないことが明らかである。したがって、yは、重要事項の説明において、Xの不動産取引に関する知識及び経験の水準に相応の説明を行うべき注意義務があった。
 (ウ)しかるに、yがXに対して、本件土地が建物の建替えのできない土地であることを説明せず、逆に建替えの可否について問われ、可能である旨説明していた事実を認めることができる。
 (エ)よって、yには、本件媒介者としての説明義務を尽くさず、虚偽の説明をした者として、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
に基づく損害賠償責任があり、Yにはyの使用者としての責任があるから、Y及びyは連帯してXに対し789万円を支払え。

(3) まとめ
 市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
都道府県が、都市計画区域の中で定める区域。
市街化調整区域に指定されるのは、
建築物の密度が低い地域である。市街化調整区域では、
少数の例外を除いて住宅等の建築が禁止されている。
内の土地をめぐる紛争では、建築不可である旨の明確な説明を怠った事案(津地裁四日市支部判決 平成9年6月25日・別掲)、既存宅地(きそんたくち)
平成13年5月18日以前は、市街化調整区域内
であっても一定の条件を満たす土地であれば、
建築許可を受けないで建築をすることが
広く認められるという制度(既存宅地)が存在した。
であるとの誤った説明をした事案(千葉地裁佐倉支部判決 平成9年4月16日)等があるが、いずれも損害賠償を命じている。
 市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
都道府県が、都市計画区域の中で定める区域。
市街化調整区域に指定されるのは、
建築物の密度が低い地域である。市街化調整区域では、
少数の例外を除いて住宅等の建築が禁止されている。
内の土地の取引のでは、媒介業者は、買主の利用目的を予め確認し、買主に不測の損害を与えることのないよう法令による制約の内容について、専門家としてできるだけ明確に、わかりやすく説明することが必要である。

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