制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:重要事項説明に関するもの | トラブル事例中項目:眺望・日照・周辺環境等 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例眺望を売り物としていたマンションの売主の説明義務違反
福岡地裁判決 平成18年2月2日
(判例タイムズ1224号255頁)
《要旨》
眺望をセールスポイントとしていたマンションの売主が、電柱や送電線によって眺望が遮られることを説明していなかったことが説明義務違反に当たるとされた事例
(1) 事案の概要
売主業者Xは、買主Yとの間で平成15年8月に、代金2,640万円、手付金100万円、違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。528万円、引渡予定日平成16年12月下旬の条件でマンション(3階301号室)の売買契約を締結した。
本件マンションの西側は海に面しており、Xの広告用パンフレットには「全室オーシャンビューのリビングが自慢です」と記され、完成予想図によれば、海側には電柱その他何の障害物も記載されていなかった。Yも、3階部分と5階部分とでベランダからの眺望に違いがあるかとXに尋ね、違いがない旨の説明を受けた上で本件売買契約を締結した。
しかし、マンション完成後の平成16年11月に、Yは購入した居室からの海への展望が電柱及び送電線で遮られていることを確認し、本件売買契約を解除する意思表示をXに対して行った。
Xは、本件売買契約に定める額の違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。の支払をYに請求する訴えを提起し、Yは、手付金の返還、オプション工事代金及び慰謝料の支払を請求する反訴を提起した。
(2) 判決の要旨
(ア)建築前にマンションを販売する場合においては、購入希望者は現物を見ることができないのであるから、売主は、購入希望者に対し、販売物件に関する重要な事項について可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があり、とりわけ、居室からの眺望をセールスポイントしているマンションにおいては、眺望に関する情報は重要な事項ということができるから、可能な限り正確な情報を提供して説明すべき義務があるというべきである。
(イ)売主Xは、本件マンション販売の際、海側の眺望をセールスポイントとして販売活動を行っており、Yもこの点が気に入って5階との眺望の差異がないことを確認して301号室の購入を検討していたのであるから、Xは、Yに対し、眺望に関し、可能な限り正確な情報を提供して説明すべき義務があったというべきである。
(ウ)301号室にとって、本件電柱及び送電線による眺望の阻害は小さくないのであるから、Xは、本件電柱及び電線が眺望に影響を与えることを具体的に説明すべき義務があったというべきであり、Xがこれを怠ったのは売主の債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に当たるというべきである。
(エ)本件電柱及び送電線による眺望阻害の程度、Yは眺望を重視し、301号室と501号室のいずれかに決定する際、担当者から眺望には変わりがないとの説明を受けたので301号室に決めたことなどからすると、Xが上記説明義務を履行していれば、Yは501号室を購入し301号室を購入しなかったことが認められるから、Yは本件売買契約を解除することができるというべきである。
(オ)以上によれば、Xの違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。請求は理由がないので棄却し、Yの請求は手付金及びオプション工事代金の範囲で理由があるからこれを認容する。
(3) まとめ
本件では、建築前のマンション販売において、眺望をセールスポイントとしたときに、電柱等の眺望阻害の影響について説明義務違反があったとして契約解除が認められている。
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