制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例花火の観望と近隣で別のマンションを建築した売主の責任
東京地裁判決 平成18年12月8日
(判例時報1963号 83頁)
(判例タイムズ1248号 245頁)
《要旨》
花火の観望を重視しマンシヨンを購入した買主に対して、売主は、近隣で別のマンションを建築する際に、その観望を妨げないよう配慮する信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の義務を負うとした事例
(1) 事案の概要
Xは、平成15年5月、業者Yが建築し分譲するマンション(13階建て)の604号室を代金3,278万円で購入した。
このマンションには、大別して南西向きの部屋と北東向きの部屋があったが、Xは隅田川花火大会の花火を観望できる北西向きの部屋を、経営する会社の取引先の接待にも使えると考えて購入した。また、引渡を受けた後花火大会の際の接待のために、リビングダイニングキッチンと隣の洋室の間の壁を取り払い、一部屋にした。
ところが、Yが、平成16年5月に、本件マンションの東側の大通りを隔てた向かい(隅田川に面した)側に本件マンションと同程度の高さのAマンションの建設に着手し、平成17年2月頃からは、Xの居室から隅田川花火大会の花火を見ることは不可能となった。
Xは、YはXが604号室を花火大会の際の取引先の接待用に購入したことを知りながら、あえて花火の観望を妨げる位置に自らマンションを建築したなどとして、Y対して、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に基づく損害金等293万円余を請求する訴えを提起した。
(2) 判決の要旨
(ア)Xが花火の観望という価値を重視し、これを取引先の接待にも使えると考えて406号室を購入し、Yもこれを知っていたことが認められ、室内からの観望が少なからぬ価値を有していたと認められることを考慮すると、Yは、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上、Xに対し、花火の観望を妨げないように配慮すべき義務を負っていたと解するべきである。
(イ)Yは、本件マンションをXに引き渡した翌年からAマンションの建築に着手し、隅田川の花火が見えない状態にしてしまったのであるから、YによるAマンションの建設は上記の信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の義務に違反し、Yは損害の賠償をしなければならない。
(ウ)Xの財産上の損害についてはこれを認めるに足りない。他方、Xの慰謝料の額を算定するに当たっては、Yの行為態様のほか、室内から花火を観賞する利益はいかなる場合にも法的に保護すべき利益とまではいえないこと、いつかY以外の誰かが同様のマンションを建築することも考えられることを十分に考慮しなければならない。
(エ)本件においては、Xの請求に対して慰謝料60万円及び弁護士費用6万円合計66万円を認めることが相当である。
(3) まとめ
本件は、1年に1回の隅田川花火大会の眺望が争われた珍しい事例である。
裁判所は、Yによる不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任の成立を認める一方で、Aマンションは建築基準法上は適法な建物であり、いつか誰かが同様の規模のものを建築することも考えられる等の事情を勘案して、Yの慰謝料の支払義務を60万円にとどめている。
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