制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:土地建物の賃貸借契約に関するもの (原状回復を除く) |
トラブル事例中項目:賃貸借契約、更新 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例国籍を理由にした賃貸借契約の拒絶
京都地裁判決 平成19年10月2日
(HP下級裁主要判決情報)
《要旨》
入居予定者の国籍を理由に、申込審査の最終段階で、賃貸借契約の締結を拒絶したことに対して不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。責任が認められた事例
(1) 事案の概要
株式会社X1は、従業員であるX2を入居予定者として、Yの所有する新築賃貸マンションの一室を賃借するために、宅建業者Zに媒介を依頼した。X2は、平成17年1月、所定の入居申込カード兼入居者カードの契約者欄にX1、入居者欄に氏名、入居希望日欄に平成17年4月と記載してZに提出した。
同年3月末、X2は敷金(しききん)
建物の借主が、賃料の滞納や不注意等による
物件の損傷・破損等に対する修復費用等の損
害金を担保するために、契約時に貸主に預け
入れるもの。、礼金(れいきん)不動産の賃貸借契約に際し、借主から貸主に支払
われる一時金の一種。通常は返還を要しないもの
とされるが、その性格については必ずしもはっきり
していない。、仲介手数料等合計47万円余をZに支払い、Zの担当者は、その約1週間後に賃貸借契約書と必要書類(外国人登録原票記載事項証明書等)を貸主側業者Aの窓口に持参したが、Yの意向を確認したうえで本件契約書等を受取るとAに言われ、Yの押印はもらえなかった。その後、ZはAから、YはX1に本件物件を賃貸しないと告げられ、同日X2にその旨を通知した。
X1らは、敷金(しききん)
建物の借主が、賃料の滞納や不注意等による
物件の損傷・破損等に対する修復費用等の損
害金を担保するために、契約時に貸主に預け
入れるもの。等を支払った3月末の時点でX1とYとの間で賃貸借契約が成立している、仮に、賃貸借契約が成立していないとしても、Yは、X2が外国籍であるという正当でない理由で本件賃貸借契約の締結を拒絶したのであるから、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上の義務違反に基づく損害賠償義務を免れない。ZはYに対し、外国人の入居を拒む意思を有しているか否かを確認すべき義務を負っていたにもかかわらずこれを行わなかったのだから債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に基づく損害賠償責任を負うなどと主張して提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)最終審査段階で、Yが賃貸しないとして賃貸借契約書に押印しておらず本件契約書が完成していないのであるから、本件賃貸借契約は成立していない。
(イ)Yは、X1らがZと共謀のうえX2の国籍を秘匿していたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
(ウ)Yは、客観的に見て賃貸借契約の成立が合理的に期待される段階に至って、X1に対して十分な説明を行うことなく、一方的にその締結を拒み、しかも、契約締結を拒むについて何らの合理的な理由がなかったのであるから、信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。上、X1が被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。
(エ)認定の事実関係によれば、本件賃貸借契約は、X2が日本国籍でないことを理由に、Yが賃貸しないこととしたのであるから、Yは、X2に対し、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。に基づき、損害を賠償する責任を負うものというべきである。
(オ)X1らは、Zが仲介業者として、賃貸人が国籍を理由に入居を拒む意思を有しているか事前に確認すべき注意義務を負っていたと主張するけれども、X1とZが特約を設けた場合は格別、そうでない限り、Zは、そのような注意義務を負わないと解するのが相当である。賃貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは、およそ許されないからである。
(3) まとめ
本事例は、入居予定者が外国籍であることを理由に契約を拒絶する差別的な行為は許されないことを改めて示したものである。借主の主張した損害金の請求はいずれも棄却され、入居予定者の賃貸人に対する損害金の請求のうち慰謝料等の110万円が認容されている。
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