制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
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トラブル事例大項目:重要事項説明に関するもの | トラブル事例中項目:眺望・日照・周辺環境等 | トラブル事例小項目: |
タイトル:特定紛争浸水被害と媒介業者の調査義務をめぐるトラブル
《要旨》
浸水警戒区域について説明を受けていないとして、買主が3階建てへの建直し等を求めたもの。解決金300万円で和解成立。
(1) 事案の概要
買主Xは、平成13年1月、業者Yの媒介で、売主業者Aから新築住宅を購入する旨の売買契約を締結し、引渡しを受けて入居した。
入居後、平成15年3月、大雨が降り床上浸水の被害を受けたため、Xは、区役所で調べたところ、本物件地域は、防災マップに記載され、浸水警戒区域になっていることが判明した。Xは、防災マップに書かれている浸水警戒区域については、Yから何も説明を受けていなかった。
そこでXは、Yに対して、浸水警戒区域内にあることは、区役所で防災マップを見れば簡単に判ることで、プロとして調査義務を怠ったものであり、建物の1階部分はピロティーとした3階建に建て直すか、それができないなら同等の物件と交換するか、損害賠償金を支払うよう主張した。
これに対してYは、一部の区しか防災マップがなく、認識が薄かったこともあり、説明しなかったことは事実であるが、重要事項説明義務違反に当たるものではない、また、今回の大雨は10年に一度の突発的な集中豪雨による天災であり、今後、市でも下水道施設の改善を行う予定であるため、建物の建直しや交換はできないが、Xが被害を受けているのは事実なので、媒介報酬(ばいかいほうしゅう)
宅建業者の媒介により、売買・交換・
貸借契約が成立した場合に、宅建業者
が媒介契約にもとづき、依頼者から
受け取ることができる報酬のこと。の範囲内で金銭の負担をしたいと主張したため、紛争になった。
(2) 事案の経過
委員3名により4回の調整を行った。調整の過程で、Xは、本物件が浸水警戒区域内の物件であることは全く知らなかった、知っていれば購入しなかった、将来再び浸水が発生することも考えられ、安心して住めない、床を貼り替えるために約618万余円の費用がかかるため少なくともその費用は支払ってほしい、媒介手数料の範囲内では納得できない等と主張した。
これに対してYは、防災マップが存在し、本物件が浸水警戒区域内にあることは全く知らなかった、今回の大雨は10年に一度の集中豪雨で一過性のものである、市でも対応等は考えているので将来的には改善されると思われる、ただ、Xが浸水被害を受けたのは事実なので、解決金として150万円を支払いたいと主張した。
(3) 和解の内容
委員から、Xに対しては、Yに説明不足があるにしてもその損害額を全額補填させることは困難である等と説明し、一方、Yに対しては、調査不足、説明不足があったことは免れないと指摘し、Yに、解決金として金300万円を提示したところ、Yは了解し、Xも同意したので、本案件は和解に至った。