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タイトル:裁判事例青田売りマンションの完成後の状況を説明する義務

大阪高裁判決 平成11年9月17日
(判例タイムズ 1051号 286頁)

《要旨》
 眺望がマンションの完成前に受けた説明と違っていたため争いになった事案において、売主業者及び代理業者には手付金返還、損害賠償の支払義務があるとされた事例

(1) 事案の概要
 売主業者Y1は、平成6年10月頃、京都市内の二条城東側に建築中の7階建分譲マンションを、代理業者Y2に販売代理させて販売していた。Yら(Y1及びY2)の宣伝用パンフレット類には、「上階からは二条城の眺望が広がります」、「二条城の景観が広がる住宅も6戸を御用意」、「高い静粛性と快適性を確保」等の記載があった。
 Xは、本件マンションのモデルルームを訪れ、Y2の担当者に、眺望を重視する意向を伝えて、6階西側の居室について、細かい説明を求めた。これに対し、Y2の担当者は、部屋の間取図を見せながら、本件マンションからは二条城が見えること、西側隣地には5階建てのビルがあるが、6階の本件居室からは視界が通っていること等を説明した。
 平成6年10月、Xは、Y2を販売代理人とし、Y1と本件居室につき、代金4,560万円 (手付金460万円)、引渡予定日を平成7年7月末日とする売買契約を締結した。
 しかし、平成7年7月、本件マンション竣工後の内覧会において、本件居室の西側窓からの視野は、隣接ビルのクーリングタワーに占められ、窓に接近しないと二条城の緑がほとんど見えない状態であることが判明した。
 Xは、契約違反であるとして本件売買契約を解除し、Yらに対して手付金の返還及び損害賠償を求めて提訴した。第一審は、Xの請求を棄却した。

(2) 判決の要旨
 (ア)未完成物件の売主は、販売にあたって、完成後の状況を、実物を見聞きできたのと同程度にまで説明する義務がある。本件居室の購入にあたり、Xが眺望を重視していることをY2においても認識し得たのであるから、Y2は本件居室のバルコニー、窓等からの視界を遮るものの有無について調査、確認して正確な情報提供をすべき義務があった。
 (イ)しかし、本件居室においては、完成後の状況がYらのパンフレット等及び事前のY2の説明と明らかに異なり、そのような状況について説明を受けていれば、Xは購入しなかったと認められるので、Xは本件売買契約を解除でき、Y1、Y2は、手付金返還及び損害賠償の支払義務がある。
 (ウ)よってY1、Y2は、Xに558万円余を支払え。

(3) まとめ
 本判決では、未完成物件の販売者は、顧客が眺望を重視し、購入の動機としていることを認識したならば、「居室のバルコニー、窓等からの視界についてその視界を遮るものの有無について調査、確認して正確な情報提供をすべき義務がある」と、厳しい判断を下しているが、Yらが眺望の良さを宣伝していたことを考えれば妥当性があるといえる。

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