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タイトル:裁判事例売主が調査を拒否した事実についての媒介業者の責任

東京簡裁判決 平成16年12月15日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 売主が物件への立入りを拒否している状況下では、媒介業者は通常行える調査を行い、その結果を買主に報告していれば、調査義務違反には当たらないとされた事例

(1) 事案の概要
 媒介業者Yの媒介により訴外A社から中古建物を購入したXが、本件建物に設置された飲料水供給のための加圧ポンプ2台の内の1台が、本件売買契約当時、故障により作動していなかった。そこでXは、Yがこれを調査してXに報告することを怠ったため、加圧ポンプ修理費相当額の損害を被ったとして損害賠償を請求した。
 Xは、重要事項説明義務の対象である「飲料水の供給のための施設」とは、単に「水道自体が整備されているか否か」などに限定されるものではなく、生活を営む上で必要不可欠な飲料水供給施設をいい、「整備状況」とは、適切な調査を行えば容易に知りうる瑕疵のあることが含まれるものと解すべきであるとし、売買契約当時、本件加圧ポンプの内の1台が故障で作動しなかったこと、故障中である旨の貼紙が貼ってあったことなどから、重要事項説明義務の対象であると主張した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Yは、売主の提供する情報だけでなく、通常の注意を尽くせば認識できる範囲で、当該物件の瑕疵の有無を調査して買主に報告すべき媒介契約上の義務を負うと解すべきである。加圧ポンプの作動状況は、重要事項説明義務の対象であるか否かにかかわらず、生活する者にとって極めて重要な事柄であることは明らかであり、Yは、調査報告義務を負うというべきである。
 (イ)しかしながら、Yが自らポンプ室に足を運んで確認なかったのは、Aの代表者が、Aの従業員に売買の話が知れることを恐れて、ポンプ室内の現況調査を拒否したためであると認められる。そのため、Aにヒアリング調査等を行い、その結果を報告したのであり、このような状況下で通常行える調査を行ったといえる。このことからすると、本件加圧ポンプの故障を覚知せず、これをXに報告できなかったことは、やむを得なかったことであり、Yの責めに帰すべき事由があったとまではいえない。Yには仲介物件の調査報告義務違反があるとは認められない。

(3) まとめ
 本件では、買主に報告できなかった場合でも、やむを得ない状況下で一部覚知できなかったとすれば、媒介業者の責めに帰すべき事由があったとまではいえないとしているが、媒介業者がヒアリング等の調査を尽くした上でのことに留意すべきであろう。

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