トラブル事例大項目:契約成立・解除等に関するもの トラブル事例中項目:契約違反(契約の不履行や遅延) トラブル事例小項目:

タイトル:処分事例自己の所有に属しない土地の売買(2)

《要旨》
 未だ自己の所有に属しない土地について、売主として売買契約を締結した等として、売主業者が免許取消処分とされた。

(1)事実関係
 X1は、居住用の建物建築の目的で、売主業者Yから土地を買い受けた。ところが、翌月、当該物件の登記簿(とうきぼ)
登記記録が記録される帳簿のこと。
上の所有者が別の業者の媒介で、他の人と売買契約を締結してしまい、契約が履行できなくなってしまった。当該土地は現況が畑であったが、Yは農地法5条1項の許可農地を転用(農地以外のものにすること)目的で
、所有権の移転等の権利の移動を行う場合は、
都道府県知事(同一事業の目的に供するために
4haを超える場合は農林水産大臣)からこの
許可を受けなければならない。なお、予め農業
委員会に届け出てから転用する場合など、一定
の場合には許可を要しない。
を受ける前に売買契約を締結していた。
 X2は、Yから、新築の土地付建物を買い受けた。しかし、建物は、建築基準法6条1項の確認を受けていないものであり、売買契約書には引渡時期の記載及び取引主任者(とりひきしゅにんしゃ)
宅地建物取引主任者のこと。宅地建物取引主任者
資格試験に合格・登録し、宅地建物取引主任者証
の交付を受けた者。
の記名押印がなかった。
 X3は、Yから、土地付建物を1,350万円で買い受け、手付金を契約時に200万円、その翌日に200万円と分割して支払った。売買契約書には取引主任者(とりひきしゅにんしゃ)
宅地建物取引主任者のこと。宅地建物取引主任者
資格試験に合格・登録し、宅地建物取引主任者証
の交付を受けた者。
の記名押印がない等の不備があり、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
期間について引渡しから3か月とする約定があった。
 X4は、Yの媒介で貸室を賃借し、賃貸借契約を締結したが、Yは、重要事項説明において、登記名義人を書面に記載して説明せず、敷金(しききん)
建物の借主が、賃料の滞納や不注意等による
物件の損傷・破損等に対する修復費用等の損
害金を担保するために、契約時に貸主に預け
入れるもの。
及び礼金(れいきん)不動産の賃貸借契約に際し、借主から貸主に支払
われる一時金の一種。通常は返還を要しないもの
とされるが、その性格については必ずしもはっきり
していない。
はなかったにもかかわらず、敷金(しききん)
建物の借主が、賃料の滞納や不注意等による
物件の損傷・破損等に対する修復費用等の損
害金を担保するために、契約時に貸主に預け
入れるもの。
を賃料の1か月相当、礼金(れいきん)不動産の賃貸借契約に際し、借主から貸主に支払
われる一時金の一種。通常は返還を要しないもの
とされるが、その性格については必ずしもはっきり
していない。
を同2か月相当とする虚偽の契約書を作成した。

(2)事情聴取
 行政庁で、事務所の立入調査を行ったところ、Yは、業務に関する帳簿を備え付け宅建業者は、事務所ごとに、その業務に関する
帳簿を備え、宅地建物取引業に関し取引のあった
都度、取引年月日、取引物件の所在地・面積
その他国土交通省令で定める事項を記載しなければ
ならない(宅建業法49条)。
ず、取引の年月日、取引に係る宅地、建物の所在地、面積等必要な事項を記載していなかったこと、従業者証明書(じゅうぎょうしゃしょうめいしょ)
宅地建物取引業者は、その従業者に対して、
その従業者であることを証する証明書を携帯
させなければ、その者をその業務に従事させ
てはならない(宅建業法48条)。
を作成しておらず、従業者に従業者証明書(じゅうぎょうしゃしょうめいしょ)
宅地建物取引業者は、その従業者に対して、
その従業者であることを証する証明書を携帯
させなければ、その者をその業務に従事させ
てはならない(宅建業法48条)。
を携帯させていなかったこと、従業者名簿(じゅうぎょうしゃめいぼ)
宅建業者は、その事務所ごとに「従業者名簿」
を作成して備え付け、最終の記載をした日から
少なくとも10年間保存しなければならない、
さらに宅建業者は、取引の関係者から請求が
あったときは、この「従業者名簿」をその者
の閲覧に供しなければならない(宅建業法48条)。
を備えていなかったことが判明した。
 Yは、上記についてすべて事実と相違ないことを認めた。

(3)処 分
 行政庁は、Yは、(ア)未だ自己の所有に属しない土地について、売主として売買契約を締結した、(イ)造成整地する予定の農地について、農地法5条1項の許可農地を転用(農地以外のものにすること)目的で
、所有権の移転等の権利の移動を行う場合は、
都道府県知事(同一事業の目的に供するために
4haを超える場合は農林水産大臣)からこの
許可を受けなければならない。なお、予め農業
委員会に届け出てから転用する場合など、一定
の場合には許可を要しない。
を受ける前に売買契約を締結した、(ウ)手付金を分割して受領し、手付けについて信用の供与をすることにより契約の締結を誘引した、(エ)代金の10分の2を超える手付金を受領した、(オ)手付金が代金の10分の1を超えるにもかかわらず、手付金の保全措置(ほぜんそち)買主が宅建業者から宅地建物を購入する場合、
手付金・中間金などの額が、
(1)工事完了前の売買にあっては、売買代金の5%
又は1,000万円を超えるとき、
(2)工事完了後の売買にあっては、売買代金の10%
又は1,000万円を超えるときは、宅建業者は、手付金等
の保全措置を講じなければならない
(宅建業法41条、41条の2)。
を講じていないなどとして、Yを免許取消し処分とした

本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。