制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:契約成立・解除等に関するもの | トラブル事例中項目:ローン不成立の場合の特約 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例ローン特約を付すべき注意義務
大阪高裁判決 平成12年5月19日
(判例集未登載)
《要旨》
媒介業者が、買主のローンが下りなければ、その契約が白紙になることを十分認識していたときは、媒介業者に、当該契約にローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 を付すべき注意義務があるとされた事例
(1) 事案の概要
買主Xは、平成6年6月、業者Y2の媒介で業者Y1から土地を3,300万円で買い受け、Y1に住居兼事務所の建築を2,700万円で請け負わせ、手付金400万円(土地売買につき300万円、建築請負につき100万円)を支払った。なお、Y1の作成に係る土地売買契約書及び建築工事請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。書には、いわゆるローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 は付されていなかった。
Xは、本件契約の代金支払については、A銀行からの借入れを予定していたが、A銀行から、物件価格が低いことを理由に融資が否認されたため、残代金支払ができず、手付金をY1に没収された。
Xは、Y1に対し、ローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 の合意があったとして、手付金の返還を求めて提訴したが、裁判所は、X主張のローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 の存在を認めるに足りる証拠はないとして、Xの請求を棄却した(大阪地判平成8年1月25日確定)。また、Xは、平成8年10月、宅地建物取引業保証協会(たくちたてものとりひきぎょうほしょうきょうかい)
宅建業者を社員として、国土交通大臣の指定
を受けた社団法人であって、社員の宅地建物
取引業に係る取引に関する苦情の解決及び
取引により生じた債権の弁済等が主な業務内容である。Y3に債務の認証の申出をしたが、Y3は平成10年7月、これを認証拒否した。
そこで、Xは、Y2に対し、ローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 を付さなかったことについての注意義務違反があるとして、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に基づく400万円の損害賠償請求を、また、Y3に対し、300万円の認証を求めて、提訴したが、第一審はXの請求を棄却したので、Xが控訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)XはY2に資金計画を詳細に告げており、Y2はローンが下りなければ本件契約が白紙になることは十分認識していたこと等からすれば、XとY2との間には本件契約につきローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 を付すとの黙示の合意があった。
(イ)本件売買契約にはローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 条項がなく、その後の自宅マンション売却契約には明示のローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 条項があるが、両契約の不可分性からすれば、本契約にも、ローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 が付されることを予定していたといえる。
(ウ)Y2は、Y1作成の契約書を点検し、Xのためにローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 条項を明記するよう申し入れるなど、予め措置すべき注意義務があったのにこれをしなかった債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。があった。
(エ)Y3は、Xに重大な過失があると主張するが、Xは不動産の取引経験のない一般消費者であるから、Xがローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 条項のない重要事項説明を受けたとしても、Xに過失があるとはいえない。
(オ)よって、Y2はXに対し400万円を支払い、また、Y3は300万円の認証をせよ。
(3) まとめ
本判決は、買主と媒介業者の関係において、買主が媒介業者に資金計画の詳細を説明しており、ローンがなければ購入できないことを認識していたときは、媒介業者は買主のためにローン特約(ろーんとくやく)
不動産取引では、予定していた融資が金融機関
等によって承認されなかった場合には、買主は
不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙
に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。
このような特約を「ローン特約」と呼んでいる。 を付すべき注意義務があるとしたものである。
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