トラブル事例大項目:契約成立・解除等に関するもの トラブル事例中項目:一定面積があることを前提とした売買 トラブル事例小項目:

タイトル:裁判事例実質的に実測面積で売買された土地の売買

最高裁判決 平成13年11月22日
(判例時報 1772号 49頁)
(判例タイムズ 1083号 117頁)

《要旨》
 購入した土地の実測面積が、公簿面積に満たなかったとする売主に対する売買代金の減額請求が認められた事例

(1) 事案の概要
 Yは、平成3年8月、業者Aの媒介のもと、Y所有の土地(公簿面積177平方メートル(53.54坪))を売却したい旨、Xに申し入れていたところ、Xは、住宅建築用に本件土地を買いたいと考え、Aを通じて坪単価の値下げを交渉した結果、Yも了承した。XがAに実測図面を要求したところ、Aは、土地の面積が177平方メートルである旨記載された公図(こうず)
登記所が保管している土地台帳付属地図の
一般的呼称。公図は、各筆の土地の位置、
形状、地番を公証するものとして事実上重
要な機能を有しており、道路付きや隣地境
界の関係を知る手立てにもなるが、必ずし
も現地を正しく反映していないものがある。
の写しをXに交付した。
 平成3年10月、XとYとの間で売買契約が締結され、その売買契約書には、売買物件の表示欄に「面積は全て公簿による」旨の記載をした条項があった。しかし、Xが土地を調査したところ、実測面積が売買契約書に表示された公簿面積よりも9.21平方メートル不足することが判明した。
 Xは、平成10年2月、Yに対し、売買代金の減額を求めて提訴したが、第一審(名古屋地裁岡崎支部判決 平成11年3月24日)は、Xの請求を斥け、控訴審(名古屋高判 平成11年12月15日)では、Xの請求が認容された。

(2) 判決の要旨
 (ア)いわゆる数量指示売買(すうりょうしじばいばい)
売主が、一定の数量があることを契約において
表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が
定められた売買のこと。
とは、当事者において、目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容量、重量、員数又は尺度があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が決められた売買をいう(最判 昭和43年8月20日)。
 (イ)売買契約当時、X、Y双方とも本件土地の実測面積が公簿面積に等しいとの認識を有していたことが窺われ、他方、実測面積以外の要素に着目して本件土地の売買金額の決定に至ったと認めるべき事情は窺われない。「すべて面積は公簿による」旨の本件条項が存在することをもって直ちに公簿面積を基礎として売買代金が決定されたと断言することもできない。
 (ウ)したがって、本件売買契約においては、本件土地が公簿面積どおりの実測面積を有することが表示され、実測面積を基礎として代金額が定められたものであるから、本件売買契約は数量指示売買(すうりょうしじばいばい)
売主が、一定の数量があることを契約において
表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が
定められた売買のこと。
に当たり、Xは、Yに対し、代金減額請求ができるものといえる。

(3) まとめ
 不動産取引の実務においては、実測面積と公簿面積の差を清算しない取引方式を「公簿売買(こうぼばいばい)
土地登記簿の表示面積により売買代金を確定
し、以後その金額を変更しない売買契約の方式。
」と称している。本件は、実測・公簿面積とも同じであるという認識を当事者が有しており、その上で坪単価を乗じて代金額を決定していること等の認定を踏まえて、契約上は、「すべて面積は公簿による」とされていても、数量指示売買(すうりょうしじばいばい)
売主が、一定の数量があることを契約において
表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が
定められた売買のこと。
実測売買(じっそくばいばい)
土地の売買契約において、取引価額を実測
面積によって確定する場合をいう。暫定的
に登記簿の面積で売買を行い、後に実測面積
を確定して取引価額を精算することがあるが、
これも実測売買である。
)とされた。
 個人の住宅地取引の場合には、あらかじめ正確に測量を行い、その面積により代金額を決定する「実測売買(じっそくばいばい)
土地の売買契約において、取引価額を実測
面積によって確定する場合をいう。暫定的
に登記簿の面積で売買を行い、後に実測面積
を確定して取引価額を精算することがあるが、
これも実測売買である。
」が多い

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