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タイトル:裁判事例自宅での契約締結とクーリング・オフ

名古屋高裁判決 平成15年4月2日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 買主の自宅で締結された土地の売買契約について、クーリング・オフ宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、宅建業者の事務所またはそれに準ずる場所以外の場所でなされた宅地建物の買受けの申込み又は売買契約について、8日間以内の場合には無条件に申込みの撤回又は契約の解除ができる(宅建業法37条の2)。ただし、(1)申込みの撤回等ができる旨等一定の事項を告げられた日から8日を経過したとき、(2)宅地建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部が支払われたときは申込みの撤回等ができない。申込みの撤回等の意思表示は、書面により行う必要があり、その効力は書面を発したときに生ずる。この場合、宅建業者は速やかに手付その他の受領した金銭を返還しなければならない。 による契約解除が認められた事例

(1) 事案の概要
 宅建業者Yは、平成13年9月、10月に建売住宅を建てて販売することを計画し、販売予定地の隣地のX宅に「隣地の土地の件でご挨拶に参りました」と記載したYの代表者の名刺を投函した。その後、XY間での電話のやりとりの後、10月12日、YはX宅を訪問し、Xを買主とする本件土地売買の仮契約を同月15日に締結することとして、Xは、手付金200万円の内金として30万円をYに支払った。同月15日、XとYは、X宅において、売買代金を2,980万円余とする本件土地の売買契約を締結し、XはYに手付金の残り170万円を支払った。なお、Xは、本件契約は仮契約であり、後日正式な契約を締結するものと思っていた。
 本件契約には、Xが所有する別途土地建物(X別宅)と等価交換方式(とうかこうかんほうしき)BR>地主の所有する土地の上にマンションなどの建物をディベ
ロッパーが建設し、土地と建物の評価額に
応じて双方が土地と建物を取得する方法。
地主は、土地の一部を提供することにより、
等価の建物の一部を取得することになる。
で本件土地建物を購入する旨の特約があった。Xは、等価交換した場合のX別宅の農協の抵当権の付替えについて、翌16日、同農協に相談したが、同農協からは抵当権の付替えには応じられない旨回答があり、また、本件契約は、Xが先に代金2,980万円余を支払って本件土地を買い受けなければならず、新たな支出なく本件土地を取得できるというXの考えと異なっていたことを知った。
 このためXは、Yに対し、同月20日到達の書面で、クーリング・オフ宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、宅建業者の事務所またはそれに準ずる場所以外の場所でなされた宅地建物の買受けの申込み又は売買契約について、8日間以内の場合には無条件に申込みの撤回又は契約の解除ができる(宅建業法37条の2)。ただし、(1)申込みの撤回等ができる旨等一定の事項を告げられた日から8日を経過したとき、(2)宅地建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部が支払われたときは申込みの撤回等ができない。申込みの撤回等の意思表示は、書面により行う必要があり、その効力は書面を発したときに生ずる。この場合、宅建業者は速やかに手付その他の受領した金銭を返還しなければならない。 を理由とする本件契約の解除の意思表示をし、さらに手付金の返還を求めた。しかし、Yがこれに応じなかったため、提訴に及んだ。一審地方裁判所はXの請求を退けたため、Xが控訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Xから本件土地の売買を電話で申し入れ、Yに対し来訪を求めたものと考えることには疑問があり、Yらの主張は採用できない。仮にXから電話したものであったとしても、Yにおいて名刺を投函して機縁を作った上、電話を通して巧みに勧誘したことが推察され、実質的にはYの方から本件土地の売込みのためにX宅を訪問したものということもできる。
 (イ)そうすると、本件は、XがX宅において本件契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合には当たらないから、XがYに対してしたクーリング・オフ宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、宅建業者の事務所またはそれに準ずる場所以外の場所でなされた宅地建物の買受けの申込み又は売買契約について、8日間以内の場合には無条件に申込みの撤回又は契約の解除ができる(宅建業法37条の2)。ただし、(1)申込みの撤回等ができる旨等一定の事項を告げられた日から8日を経過したとき、(2)宅地建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部が支払われたときは申込みの撤回等ができない。申込みの撤回等の意思表示は、書面により行う必要があり、その効力は書面を発したときに生ずる。この場合、宅建業者は速やかに手付その他の受領した金銭を返還しなければならない。 を理由とする本件契約解除の意思表示は有効というべきである。よって原判決を取り消し、Xの手付金200万円の返還請求を認容する。

(3) まとめ
 クーリング・オフ宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、宅建業者の事務所またはそれに準ずる場所以外の場所でなされた宅地建物の買受けの申込み又は売買契約について、8日間以内の場合には無条件に申込みの撤回又は契約の解除ができる(宅建業法37条の2)。ただし、(1)申込みの撤回等ができる旨等一定の事項を告げられた日から8日を経過したとき、(2)宅地建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部が支払われたときは申込みの撤回等ができない。申込みの撤回等の意思表示は、書面により行う必要があり、その効力は書面を発したときに生ずる。この場合、宅建業者は速やかに手付その他の受領した金銭を返還しなければならない。 をめぐる紛争では、本件のように顧客が業者を自宅に呼んだのかどうかの事実関係が問題となる。この事実関係については業者側に立証責任があると考えられており、本件の場合は、Yがかなり強引であったと認定してXの主張を認めている。実務にあたっては、制度についてよく説明し顧客の理解を得るとともに、誠実な業務姿勢が求められているものと思われる。

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