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タイトル:裁判事例建築条件付契約の合意解除後の建売契約締結の違法性

神戸地裁判決 平成15年4月17日
(ホームページ下級審主要判決情報)

《要旨》
 建築条件付土地売買(けんちくじょうけんつきとちばいばい)
売主と買主の間で、土地の売買契約締結後
一定期間内に、当該土地上に建築物の請負
契約を締結させることを条件に売買を行うこと。
指定期間内に建築請負契約が締結されない場合は、
契約は白紙解除となり、預り金などは全額返還される。
契約を合意解除した後に建売住宅の売買契約を締結する一連の契約行為には、違法性があったことを認めるに足りる証拠はないとされた事例

(1) 事案の概要
 平成12年12月、Xは、宅建業者Yとの間で、土地について売買代金を2,181万円とする土地売買契約と、Y及び建築会社Aとの間で、当該土地上に建築する建物について、請負代金を2,499万円とする請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。
を締結した。
 平成13年1月、XとYは、土地売買契約及び請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。
を合意解約し、同日、当該土地及びYが建築する建物について、売買代金を4,680万円とする建売契約を締結した。当初の設計の変更について、XとY及びAは打合せを重ねたが、Yは、浴室床面の段差についての交渉がまとまらないうちに、同年3月、Xの了解なしにユニットバスの据付をし、しかも、天井梁の突出部分は約130ミリメートルとなり、Xの希望の100ミリメートルの範囲内には収まっていなかった。
 同年4月、Xは、書面により、Yの債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
による契約解除の意思表示を行うとともに、違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。
の支払を求めた。Yは、期日までに工事を完成したが、Xは、残代金の支払をしなかった。
 同年8月、Xは、一連の契約手続きが、建売住宅の違法な青田売り(あおたうり)
元来は「稲が十分に成熟しないうちに収穫高を
見越してあらかじめ産米を売ること」の意味で
あるが、不動産業界においては、未完成の宅地
や建物の売買等をいう。
を隠蔽するための脱法行為であり法律上無効である等主張して、本件建売契約の解除、手付金の返還及び違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。
の支払等を求めて訴えを提起した。Yも、契約解除及び違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。
を請求し反訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件建物はバリアフリーをうたった建物ではなく、Yに、浴室床面の段差に関し確定的な約束があったとは認められず、Xの不審を招く行為が一部あったものの、本件売買契約を解除されてもやむを得ないような合意違反や説明義務違反ないし誠実義務違反があったとまでは認めることができない。したがって、XがしたYの債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
を理由とする本件売買契約解除の意思表示の効果を認めることはできない。
 (イ)一連のYの行為に、宅建業法33条及び36条並びに不動産の表示に関する公正競争規約不動産の広告に関する不動産業界の約束ごと
であり、政府(公正取引委員会)が正式に認定
したものを「不動産の表示に関する公正競争規約」という。
不動産業界では一般的に「表示規約」または
「広告規約」と呼んでいる。
5条の規制を免れるための違法行為があったことを認めるに足りる証拠はなく、手付金の支払が無効であるとするXの主張は採用できない。

(3) まとめ 
 建築条件付宅地分譲の契約を合意解除して、建売住宅の売買契約に変更するという手続きの違法性に関する事例である。
本事例は、建物に関して間取り等の変更要望を取り入れている等、当初の請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。
には実質性があったものとして、業法に関する違法性の主張は退けられたものと思われるが、請負契約(うけおいけいやく)
家の建築工事など、当事者の一方がある
仕事を完成することを約束し、相手方が
その仕事の結果に対して報酬を支払うこ
とを約束するような契約を「請負契約」という。
に実態が伴わない際には、脱法行為とされる場合もあろう。

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