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タイトル:裁判事例中古マンションの雨漏りの調査義務

東京地裁判決 平成13年1月29日
(判例集未登載)

《要旨》
 中古マンションの「雨漏り」について、売主業者の調査に過失があったとして債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
による損害賠償責任が認められた事例

(1) 事案の概要
 買主Xは、宅建業者Yから中古マンションを購入し、平成8年6月に、引渡しを受けた。ところが、間もなく、和室の天井に雨漏りが発生し、その後も和室の押入れ、玄関壁、洋間の壁など、断続的に雨漏りが発生した。Xは、その都度、管理会社に連絡を取り、雨漏り修繕を行ってもらい、平成9年4月には内装工事もしたが、同年6月頃には和室の天井から雨漏りが再び始まるなどした。
 Xは、このような瑕疵ある物件であることを事前に知っていれば本件マンションを購入しなかったから、要素に錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。
があるとして契約の無効を、また、瑕疵担保を理由とする契約の解除、さらに、Yには十分な調査を行わずに注意義務を怠り、あるいは、瑕疵を知りながら故意にXに報告せずにマンションを売却して損害を与えたことの損害賠償責任、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
責任があると主張し、提訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件マンションは昭和52年12月の建築であり、相応の経年変化があることは予想される上、一般に、雨漏りは補修工事によりこれを止めることができるから、直ちに、契約を無効とする要素の錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。
が存在したとまでは認めることはできない。
 (イ)Xは、遅くとも、内装工事を行った後にも雨漏りが生じたという平成9年6月には、隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
を知ったのであり、除斥期間(じょせききかん)
権利行使の期間が限定され、その期間内に
権利行使をしないと権利が消滅する場合をいう。
中断(ある事由により経過した期間が消え
ること)がないこと、相手方の援用(この
規定により利益を受けることの意思表示)
がなくても効果が生じることなどで消滅時効
とは異なる。
である1年が経過した後になって本件訴えを提起したので、すでに瑕疵担保を理由とする売買契約の解除権は消滅している。
 (ウ)本件マンションには、従前から雨漏りが発生していた可能性が極めて高く、専門業者であるYがわずかな注意を払い、必要な調査を行っていたならば、容易に発見できたと認められるのに、雨漏り、水漏れを発見していないものとしてXに売却したのであるから、Yには、売主として、少なくとも過失が存するものと認めるのが相当である。
 (エ)したがって、YはXに対し、本件売買契約に伴う債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
により、Xが被った損害280万円を支払え。

(3) まとめ
 本件では、売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を問う期間が経過していたため、売買契約の解除は認めなかったが、物件の状況から、売主業者の調査が不充分であったことを認め、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
による賠償責任を認めた。
 なお、判例では、中古マンションに雨漏り等の重大な瑕疵があったとして、売主に対し、損害賠償等を命じた事例(東京高判 平成6年5月25日 判例タイムズ874号204頁)、売主が中古住宅に雨漏りがあることを知りながら、買主に秘して売り渡した場合は、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
期間を経過していても、売主はその責任を逃れられないとした事例(札幌地判 平成8年5月27日)等がある。

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