制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:マンション |
タイトル:裁判事例マンション上階の生活騒音と瑕疵担保責任
神戸地裁判決 平成14年5月31日
(判例集未登載)
《要旨》
マンション上階の居住者の生活騒音に耐えられないとして、契約の解除及び売買代金の返還を求めた買主の請求が棄却された事例
(1) 事案の概要
買主Xは、平成7年7月、売主業者Yからマンション1階部分の居室を7,000万円で購入し、同年11月引渡しを受けた。
Xは、入居後、上階からのトイレの給排水音、放尿音、台所等の排水音等が聞こえ、それが激しいことから、安眠妨害、生活障害が生じ、使用に耐えられないとして、Yに防音工事を求めた。Yは、本件居室内トイレのパイプシャフト及び天井にグラスウール及び遮音シートを巻き付ける工事等を実施した。
しかし、Xは、このマンションの販売パンフレット等によりハイグレードマンションであるとして品質を保証する合意があったこと、仮に合意はなくとも通常要求される品質・性能を具備していない瑕疵があること、マンションに生活騒音対策工事が施されておらず、住宅として根本的な欠陥があること、さらには、その欠陥を知らないまま売買契約を締結したものであるから、売買目的物についての要素の錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。があると主張し、Yに対し、売買契約の解除、売買代金相当の金員等の返還を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)パンフレットの文言は、宣伝用としてよく用いられるセールストークの類にとどまるもので、これをもって特定の品質を保証したものであるとか、特別の防音性能、遮音性能を保証したものと見るのは相当ではない。
(イ)本件マンションで測定された騒音レベルは、日本建築学会が定めた基準に照らすと、遮音性能を充分備えているものといえる。また、環境基本法に基づく「騒音にかかる環境基準」をも充足していることからすると、マンション建物に通常要求される品質、性能を具備していない瑕疵があるとすることはできない。
(ウ)前示のとおり、通常の居住用建物として、通常人の居住に支障のない程度の遮音性能を有するものと認めるのが相当であるから、Xに要素の錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。があるとすることもできない。
(エ)よって、Xの請求は理由がないから棄却する。
(3) まとめ
裁判所は、判決の中で、1)足音、水洗便所の音等の固体伝播音については、適切な予測方法・評価方法や工法上の解決策は確立されていないこと、2)住宅の品質確保と促進等に関する法律住宅の性能の表示基準およびこれに基づく
評価の制度を設け、住宅に係る紛争の処理
体制を整備するとともに、新築住宅の瑕疵
担保責任について特別の定めをすることに
より、住宅の品質確保の促進等を図ること
を目的として平成12年4月1日に施行された法律。に基づく日本住宅性能表示基準住宅の品質確保の促進等に関する法律
(品確法)に基づき、国土交通大臣が
定めた住宅性能の表示に関する基準のこと。の「音環境に関すること」の表示基準にも固体伝播音は評価対象とされていないことも判示している。
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