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タイトル:裁判事例建物の不同沈下と売主等の責任

横浜地裁判決 平成11年8月5日
(判例集未登載)

《要旨》
 設計施工の過失により土地の不同沈下(ふどうちんか)
建物の基礎や地盤が場所によって異なる沈下
をすること。直接建物自体にも影響し、ひび割れ、
傾斜等の不具合を起こすことが多い。不等沈下も同意。
、建物の亀裂が生じ、売主業者には瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
、施工業者には保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
の不履行、設計者には不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
責任があるとされた事例

(1) 事案の概要
 買主Xは、平成元年2月、媒介業者Y3の媒介で、売主業者Y1から、土地建物を7,300万円で買い受けた。本件契約上、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
の存続期間は、引渡しの日から2年とされており、本件契約の際、建築業者Y2は、本件建物の構造耐力性能等を10年間保証する旨の保証書をXに交付した。
 本件物件は、Y4の設計監理により、Y2が傾斜地を切土(きりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
地面を掘り取ること。
して、擁壁を設け、H型鋼杭を打ち、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。
をしたものであった。しかし、Y4は、本件設計にあたり、擁壁にかかる杭の荷量を拡散する措置を講ぜず、また、布基礎のコンクリートの強度について、適切な指示をしなかった。Y2は、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。
部分をある程度締め固めたが、土地全体の転圧や、一定期間養生して土壌を安定させることはせず、盛土(もりど)
傾斜のある土地を平らな土地にするために、
土砂を盛ること。
にガラを混入させていた。このため、本件建物は、不同沈下(ふどうちんか)
建物の基礎や地盤が場所によって異なる沈下
をすること。直接建物自体にも影響し、ひび割れ、
傾斜等の不具合を起こすことが多い。不等沈下も同意。
を来たし、基礎、壁等に多数の亀裂等を生じた。
 Xは、引渡しから1年以内にY1に修補を求め、平成7年、Y2にも保証を求めたが、Yらは修補に応じなかった。Xは、平成9年、Y1に対し瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
等に基づき、Y2に対し保証責任等に基づき、Y3に対し債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
責任、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
責任に基づき、Y4に対し不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
責任に基づき、1,296万円の損害賠償を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件建物には、不同沈下(ふどうちんか)
建物の基礎や地盤が場所によって異なる沈下
をすること。直接建物自体にも影響し、ひび割れ、
傾斜等の不具合を起こすことが多い。不等沈下も同意。
があって、基礎、壁等に多数の亀裂等を生じ、不具合がある。
 (イ)Y1については、本件不具合は隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
であり、Xは引渡し後1年以内に修補請求をしているから瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を負う。
 (ウ)Y2については、使用上の不都合を生じる程度の沈下等について2年間にわたり保証する旨の約束をしているから、同保証債務(ほしょうさいむ)
債務を負う者がその債務を履行しないとき、
保証人である者が履行の責任を負う債務をいう。
の不履行がある。
 (エ)宅地建物取引主任者(とりひきしゅにんしゃ)
宅地建物取引主任者のこと。宅地建物取引主任者
資格試験に合格・登録し、宅地建物取引主任者証
の交付を受けた者。
は宅地造成・建物の構造等については専門家ではなく、Y3については、宅地造成、建物の構造等を、確認証、工事検査済証(けんさずみしょう)
建築工事が完了した建築物について、建築主事等は、
検査の申請を受理した日から7日以内に、当該建築物
について工事完了検査を行なわなければならない。
この工事完了検査に合格した場合に、交付される書面
が「検査済証」である。 
等により適切に施工されたことを確認すれば、一応の義務を尽くしたというべきであり、地耐力等を独自に調査すべき注意義務はない。
 (オ)Y4については、本件設計にあたり、荷重の拡散をせず、擁壁支持の杭と、地山支持の杭を混在させ、布基礎のコンクリートの強度について、適切な指示をしなかった点、注意義務違反があり、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
が成立する。
 (カ)Xの損害は、建物修繕費用1,008万円、調査鑑定費用46万円余、弁護士費用100万円である。Y1は1,008万円、Y2は1,054万円余、Y4は1,154万円余を連帯して支払え。

(3) まとめ
 地盤沈下については、前掲のほか、売主業者の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を認めたものに、東京地判平成6年9月8日、不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。
責任を認めたものに、神戸地判昭和58年12月6日、債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
責任を認めたものに、神戸地判昭和61年9月3日などがある。

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