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タイトル:裁判事例冠水しやすいという土地の性状と隠れた瑕疵

東京高裁判決 平成15年9月25日
(判例タイムズ 1153号 167頁)

《要旨》
 容易に冠水することが売買の目的物の隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
に当たるとして損害賠償を求めたが、請求が棄却された事例

(1) 事案の概要
 Xは、平成10年11月、建売業者YがAから購入した土地(以下「全体土地」)のうち、南西側の角地(以下「本件土地」)及び建物を代金3,600万円でYから買い受けたが、売主であるYからも、媒介業者からも、本件土地及びその周辺の雨水の貯留や排水状況等について、特に説明はなされなかった。
 Xは、本件土地には、大雨のときなど容易に冠水し、宅地として使用することができない隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
があるということや、売買契約の際、売主であるYが、その説明を怠ったことは債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。
(説明義務違反)に当たるなどと主張して提訴した。一審地方裁判所はXの請求を棄却したため、Xが控訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)地盤が低く、降雨等により冠水しやすいというような場所的・環境的要因からくる土地の性状も、その土地の経済的価値に影響が生じることは否定できない。しかし、冠水被害があることは、付近一帯に生じることが多く、付近一帯の価格評価の中で吸収されているのであり、それ自体を独立して、土地の瑕疵であると認めることは困難となる。本件においても、売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を認めることは困難である。
 (イ)売主である宅建業者は、売買契約に付随する信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の説明義務を負うが、売主である宅建業者が、土地の性状に関する具体的事実を認識していない場合にもその説明義務があるというためには、そのような事態の発生可能性について、説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠あるいは業界の慣行等があり、また、そのような事態の発生可能性について、業者の側で情報を入手することが実際上可能であることが必要であると解される。
 (ウ)Yは、全体土地を買い受けた際も、その付近の雨水の貯留状況等については何も説明を受けていなかったものであり、本件土地の周辺が冠水しやすいという事実を知っていたとは認め難い。さらに、土地に接する道路に雨水が貯留しやすく、それによって土地の一部が冠水するという土地の性状について、宅建業者を含む販売業者に説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠や業界の慣行等があるとも認め難い。よって、Yには前記土地の性状についてXに説明すべき義務があったということはできない。

(3) まとめ
 本件では、冠水しやすいという場所的・環境的要因からくる土地の性状は、価格評価の中で織り込まれる可能性のあるもので、「土地の瑕疵」とは認められないとして、売主業者の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
を認めなかった。しかし、判決は、売主業者は、売買契約に付随する信義則(しんぎそく)
権利の行使および義務の履行は、信義に従い
誠実に行なわなければならないとする原則をいう。
上の義務として、その取引物件に関する重要な事柄については、これを事前に調査し、それを購入者に説明する義務を負うとも指摘している。

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