制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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タイトル:裁判事例隣地と共有共用の埋設管と瑕疵担保免責特約
東京地裁判決 平成16年10月28日
(判例時報 1897号 22頁)
《要旨》
分譲目的で買い受けた不動産業者が、隣地所有者と共有共用の排水管等が埋設されているとして請求した損害賠償が認められた事例
(1) 事案の概要
不動産業者Xは、不動産業者Zの媒介で、平成14年2月、売主Yと売買代金を7,200万円とする土地建物の売買契約を締結した。
本件売買契約書には、本件不動産を現状有姿(げんじょうゆうし)
現在あるがままの状態を意味する。
「現状(況)有姿」は引渡しまでに
目的物の状況に変化があったとしても、
売主は引渡し時の状況のままで引き渡す
債務を負担しているにすぎないという趣旨
で使われることが多いが、単に「現状(況)
有姿」の記載があるからといって、直ちに
売主の瑕疵担保責任の免責の合意があると
まではいえない。のまま引き渡すこと、売主は引渡し後2か月以内に発見された雨漏り等のみ責任を負うこと等が記載されていた。また、本件の重要事項説明書には、汚水及び雑排水について、「個別浄化槽」、「接面道路配管無」、「私設管の有無 無」等と、物件状況等報告書には給・排水、ガスとも「第三者敷地の利用 知らない」、「第三者の配管埋設 知らない」等と記載されていた。
その後、Xは本件土地建物の引渡しを受け、調査をしたところ、Yの弟である隣地所有者AとYとの共有共用の生活排水管が本件土地の中央部を横切るように埋まっていること、さらに隣地に跨るようにY・A共有共用の浄化槽が埋設されていることが判明した。Xは、Y,Z及びAと話合いを行ったが物別れに終わり、Yに対して、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。または債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。責任を根拠に、土地の分譲代金の下落分、既に売買契約を締結していた第三者との解約違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。、本件建物への火災保険料等の損害賠償を求めて提訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件排水管と本件浄化槽の埋設は、地表面からその存在を認識することはできず、Xは本件排水管等が共有共用であることを知らなかったこと、Aが反対していたため、Xは当初の予定どおりに分譲することができなくなったことがなど認められ、本件排水管等の存在は、民法570条にいう隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たる。
(イ)本件売買契約書には、YがXに本件土地建物を現状有姿(げんじょうゆうし)
現在あるがままの状態を意味する。
「現状(況)有姿」は引渡しまでに
目的物の状況に変化があったとしても、
売主は引渡し時の状況のままで引き渡す
債務を負担しているにすぎないという趣旨
で使われることが多いが、単に「現状(況)
有姿」の記載があるからといって、直ちに
売主の瑕疵担保責任の免責の合意があると
まではいえない。のまま引き渡すことを前提に、Yが負う瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を雨漏り等に限定する旨の特約が記載されているが、Yは、少なくとも本件浄化槽がAとの共有共用であった事実を知っていたと推認でき、それをXに告げなかったと認められるから、民法572条により、Yは、本件特約によって瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を免れることはできない。
(ウ)Xは、引渡しを受けるまで現地に立ち入らないよう要請され、外部から内部の状況を詳細に把握することは困難な状況にあったこと等が認められ、Xに過失はなかった。
(エ)特定物の売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。は、信頼利益(しんらいりえき)
無効の契約を有効と信頼したために失った利益、
例えば有効な土地の売買契約と信頼して土地を見
に行った費用や、その土地に建築するために用意
した資材等を信頼利益という。に限られ、Xの被った損害は、解約違約金(いやくきん)
不動産の売買契約では、当事者の一方が債務
を履行しない場合には、債務の履行を確保
するために、その債務を履行しない当事者が
他方の当事者に対して、一定額の金銭(違約金)
を支払わなければならないと定めることがある。(50万円)と火災保険料(1万9千円)を認めるのが相当である。
(3) まとめ
本件では、売主(非業者)が負う瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。を一定の事由に限定する旨の特約があっても、売主が地中埋設物の存在を知りながら買主に告げなかったとして、民法572条により、売主の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。が認められた。
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