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タイトル:裁判事例売買対象地中の多量のコンクリート塊等の存在

東京地裁判決 平成10年10月5日
(判例タイムズ 1044号 133頁)

《要旨》
 地中にコンクリート塊等の産業廃棄物のあったことは隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
に当たり、売主は損害賠償責任を負うとされた事例

(1) 事案の概要
 平成8年3月4日、買主Xは、媒介業者Aの媒介により、売主Yから都内の土地を、自動車修理工場を建設する目的で、代金1億7,226万円余で買い受け、同日代金を完済して、引渡しを受けた。
 Xから本件建物の建築工事を請け負った建設業者は、同月23日から25日にかけて、杭を打つ場所においてボーリング調査を行ったが、地中に障害物は発見されなかったため、6月4日に杭工事を開始したところ、地中にコンクリート塊、ビニール片、電気コード等の産業廃棄物が大量に埋まっていたために杭工事を続行することができなくなったので、杭工事をするのに必要最小限の範囲で、コンクリート塊等の除去を行い、その後、杭工事を行った。
 翌5日、Xは、Aを通じて、Yに対し、本件土地の地中から産業廃棄物が発見されたので、現場を検分するように連絡した。Yは、本件土地を検分したが、大量のコンクリート塊は既に搬出された後であった。その後も本件土地中に産業廃棄物が発見され、処分費用等がかかった。
 平成9年4月、Xは、Yに対し、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
に基づく損害賠償請求として、248万円余を求める訴訟を提起した。

(2) 判決の要旨
 (ア)Xが本件売買契約を締結したのは、工場建設目的であるとYは知っていたこと、産業廃棄物は地中に埋まっていてボーリング調査でも発見されず、杭工事に着手して初めて発見されたこと、建設業者は、着手していた杭工事や根伐工事等を中断してこれら廃棄物を除去せざるを得なかったことに照らせば、本件土地には隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
があったと認められ、Xは、除去費用等を支出したことにより同額の損害を被っている。
 (イ)瑕疵通知義務については、Xは、平成8年6月4日に産業廃棄物を発見し、翌5日には本件土地を検分してほしいとYに通知しているから、目的物を受け取ってから6か月以内に瑕疵を発見し、直ちにYに通知したといえる。
 (ウ)よって、YはXに対し、248万円余を支払え。

(3)留意点
 本件は、売買の対象となった土地に大量のコンクリート塊等の産業廃棄物のあったことが隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。
に当たるとして買主の損害賠償請求を認容した。同種事案について、瑕疵を否定したものとして、3階建分譲マンション建設目的で買い受けた土地中に大量のビニール片、木片等が存在したもの(神戸地判昭和59年9月20日判例タイムズ541号180頁)、肯定したものとして、取引対象地中に大量の木材片等の産業廃棄物、旧建物の基礎部分等が埋設されていたもの(東京地判平成4年10月28日判例タイムズ831号159頁)、多数のPC杭及び二重コンクリートの耐圧盤等が埋設されていたもの(東京地判平成10年11月26日判例時報1682号60頁・別掲)等がある。

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