制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:自殺物件・暴力団事務所の存在 | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例自殺物件であった競売マンション
福岡地裁判決 平成17年9月13日
(判例時報 1953号 150頁)
《要旨》
競落したマンションがいわゆる自殺物件であったが、執行官および評価人に調査義務違反があったとはいえないとされた事例
(1) 事案の概要
Xは、平成15年8月、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。手続により、マンションを1,285万円で落札して、所有権を取得した。そして、同年11月、不動産業者Aの媒介により、Bとの間で、本件不動産を代金1,680万円とする売買契約を締結した。しかし、Bは、本件不動産がいわゆる自殺物件であることを聞き、購入しない旨Aに連絡してきたため、Xは、直ちに本件不動産の管理事務所に対して事実確認を行い、元の所有者が本件不動産内で自殺したことを知った。
そこで、Xは、現況調査にあたった執行官Y1及び評価人Y2が、管理事務所や元の所有者の相続財産管理人に事情聴取するなどの調査を行っていれば、本件不動産が自殺物件であったことは容易に判明したにもかかわらず、自殺物件である事実を看過し、その事実を現況調査報告書及び評価書に記載しなかったことは、買受希望者が不測の損害を被ることのないように、対象不動産の交換価値の減少を招来する事実の存否を調査すべき注意義務を怠った過失があると主張し、国及び評価人Y2に対して、本件不動産の価値減少分等として706万円余を損害賠償請求した。
(2) 判決の要旨
(ア)執行官は、目的不動産の現況をできる限り正確に調査すべき調査義務を負い、執行官が現況調査を行うに当たり、通常行うべき調査方法を採らず、あるいは、調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載内容と目的不動産の実際の状況との間に看過し難い相違が生じた場合には、執行官の注意義務違反が認められる。
(イ)評価人Y2は、現況調査として通常行うべき調査方法を採り、調査の過程で、本件不動産において元所有者が自殺したことを窺わせる具体的な情報や風評に接することはなかったのであるから、評価人としてそれ以上に調査を尽くすべき義務があったとはいえないというべきである。したがって、本件不動産において元所有者が自殺したとの事実が本件不動産の評価額に影響するとしても、評価人Y2において、評価人として尽くすべき調査義務を怠ったとはいえないとして、Xの請求を棄却した。
(3) まとめ
本件は、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。物件における、執行官及び評価人の調査義務違反が争われた事例であり、不動産の調査の過程で、元所有者が自殺したことを窺わせる具体的な情報等に接することがなかった場合には、管理人あるいは近隣住民から事情を聴取すべき義務があったとはいえないと判断し、執行官および評価人の調査義務違反を否定したものである。
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