制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
最新の情報については、
「RETIO判例検索システム」
「特定紛争案件検索システム」
「ネガティブ情報等検索サイト」(国土交通省)
「不動産のQ&A」
をご活用ください。
検索ボタンをクリックして頂くと、該当する事例の一覧が表示されます。
トラブル事例大項目:競売等に関するもの | トラブル事例中項目:競売等に関するもの | トラブル事例小項目: |
タイトル:裁判事例競売妨害に当たる暴力団の占有と損害賠償
福岡高裁判決 平成17年6月14日
(判例時報 1922号 86頁)
(判例タイムズ 1213号 174頁)
《要旨》
競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。の対象建物に入居して暴力団事務所として使用し、かつ同建物の敷地の一部を取得したことが、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。を妨害し、担保権者に対する不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。となるとされた事例
(1) 事案の概要
土地及び建物には根抵当権が設定されていたところ、平成6年1月18日に競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。開始が決定、平成7年7月、最低売却価額を約3,204万円として期間入札が実施された。その後の数回にわたる期間入札の後、平成11年6月、指定暴力団組長Yは本件建物の占有を開始した。その後も、さらに数回にわたり期間入札が実施され、平成14年8月の最低売却価額は699万円であった。
債権者であるXは、Yが本件競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。を妨害したとして、(ア)得べかりし配当金500万円と(イ)その遅延による約331万円の損害を被ったとして、提訴した。
一審は、(ア)Yは、本件競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。を妨害したものと認められる。(イ)Yの妨害がなければ、最低売却価額を999万円とした平成14年3月に実施された期間入札で落札されたものと認められる。したがって、Xの損害は上記999万円を前提とした遅延損害金99万円余であると判断した。不服としたXが控訴した。
(2) 判決の要旨
(ア)Yは、専ら本件建物が落札されることを妨げる目的で正常でない権原により本件建物を占有するなど、本件競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。を妨害したものと認められる。
(イ)抵当権者は、競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。の結果を待つことなく、その売却前であっても、抵当権に対する侵害行為がなければ売却が実現できたであろう時期以後において、当該侵害行為により価値が減少し、従前の価値を回復する見込みがないと認められる場合にはその差額を賠償請求できると解するのが相当である(大審院判例昭和11年4月13日)。本件についてみるに、Yの不法な占有以外に本件不動産の売却を妨げるべき要因はなく、また、平成11年12月期間入札時の最低売却価額1,659万円か、少なくとも平成13年7月期間入札時の最低売却価額1,482万円程度で本件不動産を売却できたものと認められる。結局、平成14年8月期間入札時の最低売却価額699万円でも買い手が現れなかったことを考慮すると、Yの占有により本件不動産の価値は上記最低売却価額の低下額に相当する額だけ減少させられたものと認めるのが相当である。
(ウ)最低売却価額の下落が直ちにXの配当額の下落を意味するものではないが、Yによる不法占有以外に最低売却価額が次々と低下していった原因はなく、最低売却価額の下落をもって交換価値の下落を推認することができる。仮に、不法占有が終了し価値が回復するとしても、これをもって法秩序を無視する不法行為(ふほうこうい)
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって
損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、
加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない。者が負わなければならない損害賠償義務が軽減されると解することはきわめて不当である。Xには、500万円を超える損害が生じた。
(3) まとめ
様々な競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。妨害行為が問題とされてきたが、最低売却価額の下落を対象不動産の交換価値の減少を損害と認めた点に特徴がある。
本システムの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、利用者が本システムの情報を用いて行う行為については本システムの制作者、運営者は何ら責任を負うものではありません。また、同種の事案について、必ず同様の結果が得られるものではありませんのでご承知おきください。なお、個別に発生したトラブル等については、管轄の行政庁等の相談窓口等にお問い合わせください。 |