制作:国土交通省 |
運営:不動産適正取引推進機構 |
1 本システムは、これまでに発生した不動産取引をめぐる他のトラブル事例をもとに、消費者の皆様が、トラブルの未然防止や万一トラブルに発展した場合に円滑な解決が図れるよう、情報を提供するものです。 2 掲載内容は、①裁判事例、②国土交通省各地方整備局や各都道府県で宅建業者に対して行った行政処分、③(一財)不動産適正取引推進機構で調整した特定紛争処理案件の中から基礎的で有用と思われる事例を抽出し、項目ごとに整理したうえ、事案の概要や紛争の結末等について要約して記載しています。 |
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トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの | トラブル事例中項目:建物の瑕疵 | トラブル事例小項目:戸建て |
タイトル:裁判事例過去の建物火災についての調査・説明義務
東京地裁判決 平成16年4月23日
(判例時報 1866号 65頁)
《要旨》
過去の火災による焼損等は隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たり、売主と媒介業者に損害賠償責任があるとされた事例
(1) 事案の概要
Xは、平成13年5月、Y2の媒介により、土地建物について代金総額2,980万円とする売買契約をY1と締結し、同6月、引渡しを受けた。
本件建物は、平成4年10月、本件建物の台所の一部が焼損する火災が発生し、消防車が出動したことがあった。本件売買契約締結に当たって、Y1からもY2からもXにその旨の説明はなく、重要事項説明書にも記載がなかった。
そこで、Xは、本件建物の本件火災による損傷は、隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たり、これにより本件建物の市場価格は少なくとも400万円減価したなどと主張し、Y1に対して、413万円余の損害賠償を請求するとともに、本件建物の本件火災による傷損を調査せず、これをXらに告知しないで、本件建物の媒介を行ったことは債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に当たるなどと主張し、Y2に対して、100万円余の損害賠償を請求した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件焼損は、本件建物本体にかかわるものではなく、本件建物の物理的価値に影響を及ぼしたとはいえない。しかし、建物の客観的交換価値は、買い手側の購買意欲など物理的価値以外の事情にも左右される。中古建物である本件建物は、規模は小さくても本件火災に遭ったことがあって、その具体的痕跡が残存しており消火活動が行われないまでも消防車が出動したという事情は買い手の側の購買意欲を減退させ、その結果、本件建物の客観的交換価値を低下させるというのが相当である。
(イ)本件焼損は、下からのぞき込めば見える状態であって、注意すれば発見し得るものであったが、Y1、Y2からは説明がなく、Xは、気付かなかったものである。Y2も本件焼損に気付いていなかったから、Xが気付かなかったことに落ち度があったとはいえない。したがって、本件焼損等は、本件建物の隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たる。
(ウ)媒介業者は売主の提供する情報のみに頼ることなく、自ら通常の注意を尽くせば仲介物件の外観から認識できる範囲で、物件の瑕疵の有無を調査して、その情報を買主に提供すべき契約上の義務を負う。Y2が本件焼損等を確認した上で、Xに告げるべきであったのにこれをしなかったのは、媒介契約上の債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。に当たる。
(3) まとめ
本件焼損は、「通常の経年変化を超える無視し得ない特別の損傷等」であり、隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。に当たること、下からのぞき込めば発見し得るものであったことにより、媒介契約上の債務不履行(さいむふりこう)
売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、
売主が物件を引き渡さない場合など、
債務が履行されない状態のこと。があったと判断された。隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買契約を締結した時点において、買主が
知らなかった瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)であり、かつ買主が通常
要求されるような注意力を働かせたにも
かかわらず発見できなかった瑕疵のこと。の認定例として参考となる事例である。