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タイトル:裁判事例山間農村地の物置での自殺

東京地裁判決 平成7年5月31日
(判例時報 1556号107頁)
(判例タイムズ 910号170頁)

《要旨》
 山間農村地の物置で、6年11月前に自殺があった場合、当該土地建物の売買には隠れたる瑕疵があり、買主は売買契約を解除することができるとされた事例

(1)事案の概要
 Xは、平成4年6月、媒介業者Aの媒介で、売主Yから、土地建物を、1,400万円で買い受けた。
 本件物件は、福島県の山間農村地の一戸建で、もとBが所有していたが、昭和60年7月、Bが本件建物に付属している物置内で農薬を飲んで自殺を図り、本件建物内のフロ場で倒れているところを発見されたが、病院で死亡し、平成4年1月、Yが競売(けいばい)
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)
を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、
その売却代金によって債務の弁済を受けるという
制度のこと。
により取得したものであった。
 Xは買受け後、月に1、2度本件建物に泊まったことがあったが、自身に健康上の問題が生じたため、やむなく売却することとし、平成5年8月ころ、業者Cに媒介を依頼した。Cの広告を見た客の一人がBの自殺の噂を聞き込んだので、Cが調査したところ、事実であることが判明し、購入希望者はすべて辞退し、Xの売買は不成立に終わった。
 Xは、本件物件には隠れた暇疵があるとして、売買契約を解除し、Yに対し、支払済みの代金の返還を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)売買の目的物に暇疵があるとは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいい、目的物が通常有すべき設備を有しない等の物理的欠陥がある場合だけでなく、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥がある場合も含まれる。
 (イ)本件物件は、山間農村地の一戸建であり、本件建物に付属する物置内で自殺行為がなされ、その結果死亡した場合、そのようないわくつきの建物を買い受けるごとは、通常人には考えられないことである。このことは、CがXの依頼を受けて本件土地及び建物の売却をしようとしたところ、自殺の事実を知らされた客のすべてが購入を辞退したことからも明らかである。
 (ウ)本件売買契約は、自殺後約6年11月経過後になされたものであるが、自殺という重大な歴史的背景及び本件物件の所在場所が山闇農村地であることに照らすと、問題とすべきほど長期ではない。
 (エ)したがって、本件売買契約は暇疵担保により解除されたから、Yは所有権移転登記手続を受けるのと引き換えに、Xに1,400万円を支払え。

(3)まとめ
 本判決は、山間農村地の一戸建てに付属するの物置内で、約7年前に農薬を飲んで自殺を図り、死亡場所は病院であったが、自殺が本件土地建物と無関係であるとはいえない等として物件についての瑕疵を認めたものである。

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