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タイトル:裁判事例交差点を隔てた暴力団事務所の存在

東京地裁判決 平成7年8月29日
(判例時報 1560号107頁)
(判例タイムズ 926号200頁)

《要旨》
 暴力団事務所が交差点を隔てた対角線の位置に存在することは土地の売買において、隠れたる暇疵にあたり、代金の2割を減額すべきであるとされた事例

(1)事案の概要
 買主業者Xは、平成4年3月、売主業者Yから、土地を、事務所兼マンション建設目的で、9,100万円で買い受け、同年4月引渡しを受けた。
 本件土地は、JR駅から徒歩3分の、近隣商業地域(しょうぎょうちいき)
主として商業その他の業務の利便を増進
するため定める地域(都市計画法(9条)。
内の、6m道路と4m道路に接する角画地であった。
本件土地の交差点を隔てた対角線の位置に、暴力団事務所があったが、同建物には代紋等は掲げられておらず、外見上容易に暴力団事務所と覚知し得ないものであった。
 Yは、昭和62年10月、本件土地を前所有者から取得したが、当時の用地担当者Aは・本件暴力団事務所の存在を知っていた。しかしXとの交渉にあたったYの担当者Bはその存在を知らなかったため、Xに告げず、また、重要事項説明書にも、暴力団事務所に関する記載はなかった。
 Xは、本件土地の引渡しを受けた後、本件暴力団事務所の存在を知り、Yに対し詐欺(さぎ)
他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせること。
取消し、錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。
無効、暇疵担保責任による解除を理由に損害賠償を求めた。

(2) 判決の要旨
 (ア)詐欺(さぎ)
他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせること。
については、Yの用地担当者Aは本件暴力団事務所の存在を知っていたが、Xとの交渉にあたったBがその存在を知っていたとは認められないから、詐欺(さぎ)
他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせること。
行為に当たるとはいえない。
 (イ)錯誤(さくご)
意思表示をした者の内心の真意と表示されたことが、
重要な点(要素)で食い違いがあることをいう(民法95条)。
については、契約交渉段階で近隣に暴力団事務所が存在するかという点についてやりとりが行われた事実を認めることはできないので、Xの動機が表示されていたとは認められない。
 (ウ)瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
については、暴力団事務所が交差点を隔てた対角線の位置に存在する本件土地については、暴力団事務所の存在そのものが本件土地の価値を相当程度減じており、宅地として通常保有すべき品質・性能を欠いているから、本件暴力団事務所の存在は暇庇に当たり、かつ、そのような外観を何ら呈していなかったから、隠れたる瑕疵に該当する。
 (エ)その額は、本件暴力団事務所の存在による収益価格の減少率等から、減価割合は、20%である。
 (オ)従って、Yは、Xに対し、1,820万円を支払え。

(3)まとめ 
 本件判決は、近隣に暴力団事務所が存在することが、土地の隠れたる暇疵にあたるとした、初の判決である。
 なお、その後、「東京地裁判決平成11年6月16日」などが出ている。

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