トラブル事例大項目:瑕疵担保責任に関するもの トラブル事例中項目:自殺物件・暴力団事務所の存在 トラブル事例小項目:

タイトル:特定紛争自殺物件の不告知をめぐるトラブル

《要旨》
 購入物件において過去に自殺があったことについて説明を受けていないとして、買主が損害賠償を求めたもの。解決金80万円で一部の当事者間で和解成立。

(1) 事案の概要
 買主Xは、平成14年5月、業者Zの媒介で、売主業者Yから中古住宅を買い受け、6月に引渡しを受けて入居した。Xによると、入居1年後、本物件の所有者関係を調べた結果、契約締結2年位前に、建物内で自殺があったことがわかった。Xは、事実確認等のため、翌年1月、Y及びZと話合いの場を持ち、その席上、Yから「申し訳ありません、補償しますので具体的な金額を言ってください」と言われたが、Xはその場では金額の回答をしなかった。その後、Yは、自分が購入した時に前の所有者から自殺のことは何も聞いていないとして、話合いに応じてもらえない状態になった。
 そこでXは、Yには告知義務があるとして、損害賠償金900万円を支払うよう主張し、また、Zに対しても、売買契約の前に説明がなかったとして、損害賠償金を支払うよう主張した。
 これに対してYは、Xの請求金額900万円が妥当かどうか判断できないと主張し、Zは、Yから自殺物件という話はなく、全く知らなかったと主張したため、紛争になった。

(2) 事案の経過
 委員3名により5回の調整を行った。調整の過程で、Xは、Yに対し、(ア)購入後、自殺物件であることが判明した、(イ)自殺があったことの説明があれば購入しなかった、(ウ)買戻してもらっても次に住む家が買えない、買戻しではなく、金銭的な解決を希望する、(エ)損害賠償として900万円の金額に拘るわけではないが、仮に売却した場合、資産価値低下が予想されるので、少なくとも500万円程度は支払ってほしい等と主張した。また、Zに対しては、媒介業者としての調査義務違反があり、損害賠償を支払うなど誠意を見せてほしい等と主張した。
 これに対してYは、自殺したとは聞いていない、自分も被害者であり、買戻しなら応じるが、Xが希望する金銭的な解決は要求が多額すぎて応じられないので、訴訟で対応する等と主張した。
 一方、Zは、Xに迷惑をかけたのは事実なので、受領した媒介手数料65万円余は返還したいと申し出た。

(3)和解の内容
 委員から、Yには売主業者としての瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
特定物の売買契約において、その特定物に
「隠れた瑕疵(かし:「きず」「不具合」
「欠陥」のこと)」があったときに、売主
が買主に対して負うべき損害賠償等の責任
を「瑕疵担保責任」と呼んでいる(民法570条)。
があり、告知義務違反は免れないと思うが、Xが金銭的な解決を希望しているので、Xの希望を入れることはできないかと打診したところ、Yは、金銭的な解決は拒否する、訴訟で決着すると主張し、Xも訴訟で対応すると主張したので、委員が協議の結果、これ以上の調整は不可能と判断され、双方合意のもと、XとYとの調整はやむを得ず打切りとした。
 一方、Zに対しては、調査不足は免れないことを指摘し、解決金として80万円を提示したところ、XZ双方とも納得し、XZ間は和解に至った。

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